第5回:親の薬、大丈夫?飲み忘れ・余っている薬・増えすぎた薬をどうする?

【親と暮らす|第5回】

親の家に行ったとき、何気なくテーブルを見る。

そこに薬の袋が置いてある。

「あれ?これ、前にもらった薬じゃない?」

引き出しを開けてみると、さらに薬が出てくる。

新しい薬。

古い薬。

開封した薬。

いつのものか分からない薬。

本人に聞いてみると、

「ちゃんと飲んでるよ」

と言います。

でも、どう考えても量が合わない。

親の年齢が上がってきたら、一度確認しておきたいのが薬の管理です。

薬が余っていることは、単なる「飲み忘れ」だけではなく、親の暮らしに起きている小さな変化を教えてくれることがあります。


薬は、いつの間にか増えていく

若いころなら、

「風邪をひいたから数日薬を飲む」

くらいだった人でも、年齢を重ねると毎日飲む薬が増えることがあります。

血圧。

糖尿病。

コレステロール。

心臓。

胃。

痛み。

骨粗しょう症。

睡眠。

さらに目薬や塗り薬。

しかも、すべて同じ病院から出ているとは限りません。

内科。

整形外科。

眼科。

皮膚科。

それぞれの病院から薬が出る。

気がつけば、

「自分が何種類飲んでいるのか、本人もよく分からない」

という状態になることがあります。


「ちゃんと飲んでるよ」を疑うのではなく、一緒に確認する

親に、

「薬、ちゃんと飲んでる?」

と聞く。

すると、多くの場合、

「飲んでるよ」

と答えるでしょう。

そこで、

「こんなに余ってるじゃない」

と言ってしまうと、親も嫌な気持ちになるかもしれません。

本人は、わざと飲んでいないわけではありません。

朝飲んだかどうか分からなくなった。

外出していて忘れた。

食事をしなかったので飲まなかった。

薬が変わったことを理解していなかった。

似た薬がいくつもあって分からなくなった。

いろいろな理由があります。

だから、

「ちゃんと飲みなさい」

ではなく、

「どうやったら飲みやすくなるかな」

と一緒に考えるほうがいいと思います。


薬が余っているのは珍しいことではない

薬が余っていることを「残薬」といいます。

例えば30日分の薬をもらっても、毎日きちんと飲めなければ少しずつ余っていきます。

1回忘れる。

また1回忘れる。

それが何か月も続けば、かなりの量になります。

問題なのは、余った薬があるのに次の診察で、

「いつも通り30日分」

処方され続けることです。

すると家の中の薬は、さらに増えていきます。

だから、余っている薬を見つけたら、

隠す必要も、勝手に捨てる必要もありません。

まず医師や薬剤師に相談してみることが大切です。


薬局に持って行って相談する

「家に薬がたくさんあるけれど、どうしたらいい?」

そんなときは、普段利用している薬局で相談できます。

何の薬なのか。

現在も使っている薬なのか。

どのくらい余っているのか。

次回の処方日数を調整できそうか。

薬剤師が確認し、必要に応じて医師への確認につなげることもあります。

可能なら、

お薬手帳と一緒に、家にある薬をまとめて確認してもらう

のも一つの方法です。

ただし、薬の種類や保管状態によって扱いが異なるため、自分の判断で古い薬を飲んだり、処方薬を他の人に渡したりするのは避けたいところです。


「朝・昼・夕」が分からなくなってきたら

薬が余る理由が、

「たまに忘れる」

くらいなら、工夫で改善できることがあります。

でも、

「今日の朝の薬を飲んだか分からない」

「夕方なのに朝の薬を飲もうとしている」

「昨日の薬がそのまま残っている」

こうしたことが増えてきたら、少し注意して見ておきたいところです。

薬の問題だけではなく、

生活の中で時間や曜日を管理することが難しくなってきている可能性

も考える必要があります。

薬は毎日決まった時間に使うことが多いため、生活の変化が表れやすい場所でもあります。


一包化という方法もある

薬が何種類もある場合、

「これは血圧」

「これは胃」

「これは朝だけ」

「これは朝と夕」

と一つずつ管理するのは大変です。

そこで、処方内容や薬の性質などに応じて、

1回に飲む薬を一つの袋にまとめる「一包化」

という方法があります。

袋ごとに、

朝食後。

夕食後。

などが分かるようにすることで、薬を管理しやすくなる場合があります。

ただし、すべての薬が一包化に適しているわけではありません。

希望する場合は医師や薬剤師に相談します。


カレンダーを使う方法もある

薬を整理しても、

「飲んだかどうか分からない」

という問題が残ることがあります。

そんなときには、服薬用のカレンダーなどを利用する方法もあります。

月曜日の朝。

月曜日の夕。

火曜日の朝。

というように薬を分けておけば、

その場所に薬が残っているかどうかで確認できます。

本人だけでなく、家族が見ても分かりやすい。

これは意外に重要です。

親の家に行ったとき、

「今日の朝の分が残っているな」

と気づけるからです。


薬が多い=悪い、ではない

ここは誤解したくないところです。

「薬が10種類もある。多すぎるから減らしたほうがいい」

と家族だけで判断することはできません。

病気によっては、複数の薬が必要なことがあります。

大切なのは薬の数だけではなく、

今の本人に必要な薬なのか、きちんと使えているのか

ということです。

長く飲んでいる薬。

別々の病院から出ている薬。

飲むとふらつく気がする薬。

飲み方が分からない薬。

気になることがあれば、医師や薬剤師に伝える。

薬を勝手に中止したり、量を変えたりしないことも大切です。


薬局を「薬をもらう場所」だけにしない

親世代の中には、

「薬局は処方箋を出して、薬をもらうところ」

と思っている人も多いかもしれません。

でも、薬について困っていることがあれば相談できます。

「薬が余っている」

「飲み忘れが多い」

「錠剤が飲みにくくなった」

「何の薬か分からない」

「複数の病院にかかっている」

「最近ふらつく」

こうした情報は、薬を安全に使ううえで重要です。

親が一人では説明しにくいなら、家族が一緒に相談してもいいでしょう。


通院できなくなったら、薬剤師が自宅を訪問する方法もある

さらに年齢を重ねると、薬局へ薬を取りに行くこと自体が難しくなる場合があります。

また、

薬は届いているけれど、本人だけでは管理できない。

飲み忘れが増えている。

たくさんの薬が家に残っている。

そんなケースもあります。

状態や制度上の条件などによっては、医師などと連携しながら、薬剤師が自宅を訪問して薬の管理や服薬を支援する方法があります。

家にある薬を確認する。

飲みやすいように整理する。

服薬状況を確認する。

必要な情報を医療・介護関係者と共有する。

「薬局へ行く」から「薬剤師に来てもらう」へ。

親の状態によっては、そんな選択肢もあります。


薬を見ると、親の生活が見えてくる

薬の管理を一緒にしてみると、薬以外のことにも気づくことがあります。

「あまり食べていないな」

「最近、曜日を間違えることが増えたな」

「病院の予定を忘れている」

「同じものを何度も買っている」

「以前より歩くのが遅くなった」

薬の飲み忘れだけを直そうとしていたのに、

親の生活そのものが少しずつ変わっていることに気づく。

そんなことがあります。

だから私は、親の薬は一つの「生活のサイン」だと思います。


叱るより、仕組みを変える

薬を飲み忘れた親に、

「昨日も言ったでしょ」

と言いたくなることもあるでしょう。

でも、毎日注意し続けるのは親にとっても家族にとってもつらいものです。

だったら、

薬を一包化する。

カレンダーを使う。

薬局をまとめる。

家族が定期的に確認する。

医師や薬剤師に相談する。

必要なら医療・介護のサービスにつなげる。

本人の努力だけに頼るのではなく、

忘れても困りにくい仕組みに変えていく。

そのほうが長く続けられるのではないでしょうか。


今回のまとめ

親の家で薬がたくさん余っていた。

それを見つけたら、

「ちゃんと飲んで!」

で終わらせない。

なぜ余ったのかを、一緒に考えてみる。

単なる飲み忘れなのか。

薬が複雑すぎるのか。

病院ごとに薬が分かれているのか。

それとも、生活そのものに少し変化が起きているのか。

薬は、親の暮らしを映す小さな鏡なのかもしれません。

そして、

家族だけで解決しようとしなくていい。

医師。

薬剤師。

そして必要になれば、介護に関わる専門職。

少しずつ周りの人に相談していけばいいのだと思います。

次回は、そんな「ちょっとした変化」に気づいたときに知っておきたい、

「まだ介護じゃない。でも少し心配…そんなとき、どこに相談すればいい?」

について考えてみたいと思います。

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